研究概要 |
活断層から発生する内陸直下型地震の多発する「ひずみ集中帯」(日本海東縁変動帯南部から近畿北部にいたる地域)のなかで,大地震ギャップのあるセグメントの長期的地震発生ポテンシャルについて,変動地形学的・地震地質学的・地球物理学的視点から合理的な理解を深め,統合的な評価を目的とする。本年度は傾動隆起の優れたレファレンスをもつ佐渡海嶺上の飛島と歴史地震地変記録のある象潟海岸を調査対象とした。得られた成果・知見は以下の通りである。 1.飛島では,傾動隆起の累積を示す更新世海成段丘を4面(高位より第1,2a,2b,3段丘),完新世離水地形を3つのレベル(第4段丘,,L1,L2)に認定した。これらは東縁部海底活断層(諸元:長さ47km,傾斜角55°,Mw7.0-7.2,すべり量5m,地震発生間隔最大2,900年前後)の活動によって断層上盤が関連摺曲として成長することに伴う地震性地殻変動の累積であると理解される。 2.象潟以南の岩石海岸において,2つのレベル(高位からL1:300-480cm,L2:140-230cm)の離水海岸地形を認定した。L2が1804年象潟地震時の隆起イベント,L1がそれより一つ前の地震隆起イベントと推定された。ディスロケーションモデルによる断層変位量計算の結果,飛島海盆との境界断層(象潟沖18km)において諸元を長さ42km,傾斜角30°,幅42km,すべり量7,5m,上端/下端深度1/13kmにセットすると海岸部の隆起量を最も良く説明でき,また津波を励起させるに十分であることが判明した。
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