初年度につき、関東平野と濃尾平野における沖積層層序と変動地形に関する現地調査ならびに堆積物分析研究を以下の内容で実施した。瀬川断層北端地域と深谷断層南端地域の現地調査を実施し、地形測量によって、地震に起因する撓曲崖の比高を求めた。また、荒川河谷ぞいのボーリング資料を多数収集し、沖積基底礫層の3D分布を調べて、綾瀬州断層による鉛直変位が約5m認められることを明らかにした。また沖積層に埋没する段丘面の分布と造構運動との関係を検討した。さらに、撓曲崖において地中レーダー探査を行い、地下表層構造を解明した。また、ボーリング掘削調査候補地点を選定した。用地交渉を次年度に継続し、許可を得た場所でコアを掘削予定である。濃尾平野では、3本のオールコアボーリング試料を対象に様々な分析を行い、電気伝導度や粒度などの変化から完新世後期における突発的海面上昇イベントを検出した。それらのイベントが古地震活動による平野側(逆断層の下盤側)の沈降運動に起因するいことを指摘した。現在、論文は査読中である。可能性を論ずるとともに、イベントの痕跡を3時期にわたって見出した。加えて、上記のイベント発生時期が、従来の養老断層系活断層調査で指摘されている古地震発生時期と矛盾しな 以上は、沖積低地の地下に伏在する活構造や、断層運動の痕跡を見出すための新しいアプローチとして位置付けることができる。とくに、次年度以降さらに現地調査を進めることによって、従来の方法との差異や長所が明確化すると期関東平野では、期待できる。
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