研究概要 |
沖積層中に過去の活断層イベントの痕跡を発見するための手法開発の目的で、濃尾平野において完新統コアの電気伝導度(EC)を測定・解析し、補備的に粒度分析、珪藻分析を行い、論文を発表した(Niwa Sugaiほか、Quaternary International)。河川洪水氾濫堆積物、内湾泥層、デルタ砂層などの混濁水のEC値を系統的に吟味した結果、EC値は地層堆積時の塩分濃度の指標として有効であること、ただし、圧密等による堆積時以降の間隙水量変化を考慮する必要があることを明らかにした。これをもとに、沿岸デルタ域における高分解能での相対海面変動史の解明を進めている。内陸逆断層が生起させた歴史地震が相対海面上昇イベントとして地層中に保存されている可能性について、成果の一部を第四紀研究の原著論文として発表した(丹羽ほか2009)。さらに、時間を遡って、完新世中期以降の変動解明をすすめ、地学雑誌に原著論文を投稿中である。また、珪藻遺骸群集を用いた完新世の濃尾平野における古水文環境の復元を行い、国際誌に掲載した(Saegusa, Sugalほか2009、Quaternary International)。珪藻に加えて、安定炭素同位体、全有機炭量、全窒素量、全硫黄量を測定し、それらの指標とECを組み合わせて、浅海~潮間帯域における水深復元の検討を進めた。一部の成果は、2009年6月にオーストラリアで開催された国際地形学会議で発表した。 荒川低地帯地下の埋没地形面の研究を行い、沖積基底礫層が深谷断層によって5~10mの鉛直変位をおこしていることを明らかにした。その年代は1.5万年前以降であり、従来の周辺地域の成果と整合的であることが確認された(石原ほか地球惑星科学連合にて発表。第四紀研究に原著論文として投稿し、査読中)
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