研究概要 |
本研究計画は,発生が差し迫っている海溝型巨大地震の発生モデルに関して,陸上の地形・地質学的データから新たな検討を加えることを目的としたもので,特に歴史記録にみられる東南海・南海地震とは異なったタイプの地震性地殻変動を経験した可能性にっいて検討し,特に南海トラフ・メガスラストの各セグメント間の連動型地震だけではなく,海溝陸側斜面に発達する海底活断層と海溝型巨大地震との連動型地震にっいてシミュレーションなどを通してその可能性を探っていくことを主眼においている。本年度は,主に東南海セグメントである紀伊半島南部を中心とした地域において,陸上に分布する完新世隆起石灰岩,津波石,津波堆積物,隆起波食地形などを対象にした調査を,9月と1月に延べ10日間程度行なった。具体的な調査内容は,完新世隆起石灰岩や隆起波食地形の海面からの正確な高度や分布位置を求めるためRTK-GPS測量やトータルステーション測量,レーザー測距器測量を行った。年代測定に利用できる石灰岩試料は,ハンマーと平たがねを使って岩礁からはがして採取した.現在分布データの解析と採取した試料の放射性炭素年代測定をすすめているところであるが,その結果の一部はすでに「紀伊藩東南部沿岸に分布する隆起生物遺骸群集の高度と年代」というタイトルの論文としてまとめた。本年度の調査のみからの予察的な結果として,これまで測地学的データや地震学的データからは全く未知であった,紀伊半島南部を沈降させるような地殻変動を伴ったプレート内地震が,数千年の発生間隔で起こり,それが巨大津波を発生させているのではないかという予想をたてている。来年度以降はそのような地震とプレート間地震の連動にっいて,モデル計算などを用いながら検証していく予定である。
|