研究概要 |
本研究計画は,発生が差し迫っている海溝型巨大地震の発生モデルに関して,陸上の地形・地質学的データから新たな検討を加えることを目的としたもので,特に歴史記録にみられる東南海・南海地震とは異なったタイプの地震性地殻変動を経験した可能性について検討し,南海トラフ・メガスラストの各セグメント間の連動型地震だけではなく,海溝陸側斜面に発達する海底活断層と海溝型巨大地震との連動型地震についてシミュレーションなどを通してその可能性を探っていくことを主眼においている。本年度は、紀伊半島南部に分布する隆起波食棚および隆起石灰岩の分布調査を,昨年度の調査でカバーできなかった地域を中心に3日間行った.また同時に,紀伊半島先端部の潮岬において、化石から隆起量を正確に見積もるため,現生の石灰質殻を持つ生物の生息分布高度調査を、潜水作業(素潜り)によって実施した。その結果、これまで他地域の既存データから推測していた生息深度を、より正確に見積もることができるようになった。並行して紀伊半島の東側に位置する室戸岬の隆起石灰岩についても,過去に採取したコア試料を基にして,詳細な構成生物種の分析を行うことによって地殻変動の様式を推定し,紀伊半島との連動隆起の可能性を視野に入れた分析を行った。次に、紀伊半島の先端に位置する橋杭岩において,連動型巨大地震が引き越した巨大津波によって運搬されたと考えられる漂礫の現地調査を行った。すでに前年度これらの巨礫の分布をGPS,トータルステーションなどを使って精密な測量を実施済みである。今年度は,津波の波源域や波高などを推定するため,漂礫の密度(体積と重量)、摩擦係数について小型の力量計を用いて測定した。これらの調査結果を元に、連携研究者を含めた打ち合わせ会議を行い、津波の流速計算から震源モデルの推定を行い,連動型地震の可能性について考察中である。
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