本研究は大都市近郊農村を対象にして、農地や谷戸、および里山や林地などの緑地空間の再編をグリーントリフィケーション(greentrification)として捉え、その創成メカニズムと持続性を明らかにすることを目的としている。グリーントリフィケーションとは「緑地空間の再編・美化」や「緑地空間価値の高度化」ともいわれるもので、その研究は農村や農山村における緑地空間の経済的な価値だけでなく、非経済的な価値を見直すことにもなる。大都市圏におけるグリーントリフィケーションの諸類型(大都市近郊型、大都市近郊外縁型、大都市遠郊型)にしたがって、いくつかの事例を抽出して実証的な研究を行った。大都市近郊型の事例研究では、里山保全とルーラルツーリズムを基盤としたグリーントリフィケーションのメカニズムを明らかにした。具体的には、里山を農村空間の要素とするコミュニティと、余暇空間の要素とするコミュニティとが協働で保全し、里山を核とする農村空間の商品化を図ることによりルーラルツーリズムとグリーントリフィケーションが成立発展することがわかった。この研究ではグリーントリフィケーションとルーラルツーリズムとが密接に関連していることがわかった。一方、大都市遠郊型の事例研究でも、グリーントリフィケーションとルーラルツーリズムが農村空間の商品化と関連して密接な関係にあることが実証的に検証された。具体的には、カナダのバンクーバー大都市圏遠郊のオカナガンバレーにおけるワインツーリズムの研究を行った。オカナガンバレーの農村では、農村空間や農業生産のグリーントリフィケーションを基盤にして、ブドウの栽培景観-ワインナリー-ワイン販売-スローフード-農村観光-グルメを統合することでワインツーリズムを発展させ、農村空間のグリーントリフィケーションを確かなものにしてきた。
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