本研究は大都市近郊農村を対象にして、農地や谷戸、および里山や林地などの緑地空間の再編をグリーントリフィケーション(greentrification)として捉え、その創成メカニズムと持続性を明らかにすることを目的としている。グリーントリフィケーションとは「緑地空間の再編・美化」や「緑地空間価値の高度化」ともいわれるもので、その研究は農村や農山村における緑地空間の経済的な価値だけでなく、非経済的な価値を見直すことにもなる。今年度においては、グリーントリフィケーションが具現化され、景観に投影されたものとしての農村再編をいくつかの事例に基づいて実証研究を行った。大都市近郊農村の事例研究では、里山保全とルーラルツーリズムを基盤としたグリーン・トリフィケーションによる農村再編の性格を明らかにした。具体的には、横浜市青葉区寺家地区を事例にして、農村空間の構成要素である里山と農地を農村と都市のコミュニティが協働で保全してグリーントリフィケーションを成立発展させるとともに、そのことが大都市近郊農村の持続性を高める方向で再編させる方策であることがわかった。一方、大都市遠郊農村の事例研究でも、グリーントリフィケーションに基づくルーラルツーリズムが農村再編の営力となるだけでなく、農村空間における商品化の持続性を高めることがあきらかになった。具体的には、オーストラリア南部における農村では、農村周辺の農地や森林・草地のグリーントリフィケーションに努め、環境保全や景観保全を主体に、他の地域資源(ジオサイトなど)と結びつけながらルーラルツーリズムを発展させ、農村再編を進めてきた。結果として、グリーントリケーションに基づく農村景観がルーラルツーリズムの商品となり、農村地域の持続性を確かなものにしてきた。以上の実証研究からは、農村空間におけるグリーントリフィケーションが農村再編における重要な方策の1つになることが明らかになった。
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