研究概要 |
A. 強雨域の地域性に関する解析 南関東を対象に2005~2008年の8月における全国合成レーダーデータを用いて,降水強度30mm/h以上の強雨域をその面積によって分類し,地域による強雨域の空間構造の差異を検討した.東京都心域は山岳部と比べて強雨の発現頻度は相対的に低いものの,降水強度の最大値が他地域と比べて大きい場合が多い.特に,埼玉県と東京都の東部の県境付近では,小さい空間スケール(1~4km2)の強雨が多く発現しており,降水域内における降水強度の大きい領域の空間的な集中性が高い傾向にあることが分かった. B. 関東地方の強雨発現に対する東京都市域の影響 東京都区部とその周辺の多数地点における10分間隔の各種気象観測値を用いて,2008年8月5日に東京都区部で発生した短時間強雨事例の詳細な解析を行った.地上および上空(東京タワー)の風や気温の解析により,強雨域に近接した霞が関付近の高い都市キャノピーによって冷気プール縁辺部が停滞維持され,それが東京湾からの南東風を上昇させて強雨の持続に関与した可能性が指摘された.また,強雨域周囲では,強雨終了後もしばらく大きい気温傾度(冷気プール縁辺部に相当)が維持されており,これには雨水による都市表面の冷却と,都市キャノピーによる冷気の機械的な滞留の関与が想定できる.以上のことは,都心部の高い都市キャノピー(建築物群)が短時間強雨をもたらす対流雲の発生発達(組織化)や世代交代に影響することを示唆するものであり,都市域・非都市域の事例比較やシミュレーション等による検討が必要である.
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