研究概要 |
A.風速の差異による東京都区部の強雨頻度分布 1991年から2003年における東京都区部の強雨時(時間降水量20mm以上)を対象に,東風と南風のそれぞれ弱風時(風速3m/s未満)と強風時(風速3m/s以上)における強雨発現頻度の空間分布を解析した.その結果,風向別に認められる局地的な強雨頻度の極大域には,強風時と弱風時とで大きな違いは認められない.しかし,弱風時には強雨頻度の局地的な集中性が高く,一方強風時には都心を中心として,風下側に向かって左手側が高頻度域,右手側が低頻度域となる傾向が確認された.これは,風速が大きくなるにつれて,新宿や池袋などの地表面粗度が特に大きい数kmスケールの領域とともに,都心域とその周囲の差異という大きい空間スケールの地表面粗度分布が収束の形成にとって重要となる可能性を示唆している. B.地上風の収束域と強雨発生域との関係 2006年から2008年の夏季(6月から9月)に首都圏で発生した短時間強雨について,強雨の発現とそれに先行する収束との関係を,1時間間隔のレーダーアメダス解析雨量および自治体による大気汚染常時監視測定局の風向風速データを用いて統計的に解析した.短時間強雨発生の1-2時間前には,強雨の発生域にほぼ対応して収束の極大域が現れている.事例ごとに両者の時間変化を調べると,強雨域は収束域の中心の移動に追従して移動する傾向のあることが認められた.このように強雨域と収束域は,1時間値によっても空間的にはある程度対応するが,両者の量的な関係を得るには,より高い時間分解能の解析が必要とされる.
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