研究概要 |
本研究は,河川から溢流して形成された「旧河道-自然堤防地形」を巨大洪水の痕跡と考え,その形成時期を特定し,過去5千年間における巨大洪水発生時期および頻度の変化を,地球温暖化期との対応から求めるものである。 本年度は,北上川中流部にあたる一関〜平泉地区の氾濫原およびそれに隣接する段丘面上に認められる4筋の旧河道について,その埋積堆積層の調査を行うとともに,堆積物の放射性炭素年代測定により,それぞれの河道放棄年代を求めた。 1.北上川本流氾濫原内右岸側に確認される2筋の旧河道は,1,330yrBPおよび2,710yrBPに河川としての機能が停止していたことが求められた。研究代表者が従来求めてきた同様の河道放棄年代の資料と合わせ考えることにより,現在地表に展開する北上川氾濫原の形成開始時期および河道変遷の履歴が求められる。 2.北上川右岸側に発達する2段の段丘面のうち,低位の段丘面上に認められる旧河道について7,470〜8,850yrBP頃に河道としての機能が消失したことが求められた。この結果は衣川地区の段丘面の形成年代を推定する重要な手がかりとなる。また,上位の段丘面上に認められる小規模河川跡の河川機能停止時期は2,100yrBPであることが求められ,弥生時代には既に淵としての機能を失っていたことが求められた。12世紀藤原時代に淵として流水があったと考えられてきた猫間ヶ淵が,当時は泥湿地であったことが明らかとなった。
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