研究概要 |
近畿三角帯北西縁とその周辺地域における中期更新世以降の地殻変動と地形発達を,盆地や平野の地下に伏在する堆積物の堆積年代及び堆積速度の変化や,段丘層の形成年代を明らかにすることから検討した.今年度は,神吉盆地,福知山盆地,久美浜湾低地,揖保川下流低地で得られたボーリングコアや,福知山盆地・綾部盆地の高位段丘層について火山灰分析や火山ガラス分析を行い,大山火山起源の中期更新世テフラ(大山最下郎火山灰層のcpm,hpml,大山奥津軽石DOPなど)や,九州地方のカルデラ起源の広域テフラ(阿蘇3,阿多鳥浜,加久藤テフラなど)に対比できる火山灰層もしくは火山灰降下層準を決定した.その結果,神吉盆地では約50〜60万年前に逆断層運動による沈降が始まり,福知山盆地でもほぼ同時代に中部更新統・福知山層の堆積が始まったが,約15〜20万年前に流路変更による基準面低下の影響を受けて侵食に転じたことがわかった.一方,久美浜湾低地は約40〜50万年前から緩慢な沈降を続けていたが,加久藤テフラ降下後の10〜30万年前の間に隆起傾向に転じたことが判明した.このような地殻変動は,大阪湾と六甲山,播磨灘周辺地域において近畿三角帯北西縁を構成する六甲・淡路島断層帯や有馬・高槻断層帯の右横ずれ断層運動が増大した時代と一致しており,それに伴う近畿三角帯北西周辺地域の西〜北西低下の傾動運動の活発化だけでなく,中期更新世以降においても地殻変動の様式変化や速度の増大が起こった可能性を示唆している.
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