研究概要 |
中期更新世以降の近畿三角帯北西縁へのひずみ集中により活断層の発達に伴う北西低下の傾動ブロック運動の進行とともに同帯北西側地域のゆるやかな沈降が生じたというテクトニクスおよび地形発達のシナリオを,福知山盆地・氷上盆地・三方低地などの盆地埋積層の堆積年代をボーリングコアの火山灰層序や古地磁気層序から明らかにした.福知山盆地では32m長のコア堆積物中に大山火山起源の中期更新世テフラevsとその上下の短い逆帯磁層準を見出し,酸素同位体ステージ(MIS)12~7にかけての堆積史が判明した。氷上盆地100mコアでは,AT, SI(三瓶池田テフラ),DNP(大山生竹テフラ),K-Tz, Ata-Thなどの火山灰降灰層準を認定し,0.1~0.2m/千年の平均堆積速度を求めた.この堆積速度とコア堆積物の層相の急変層準,および砂礫層を構成する礫種の変化に基づき,約50万年前以前と15~20万年前の間に加古川-由良川水系間で河川争奪や流路変更が,それぞれ生じたことが推定された.また三方低地における長尺コアの詳細分析に基づいて,三方断層帯の約8万年前以降の活動史と平均活動間隔を明らかにした.コア堆積物の火山灰層序から三方低地帯の沈降がMIS6前後に始まったことが確認でき,他の盆地の埋積史と併せて,近畿三角帯北部~北西部地域では約15~20万年前に活断層の発現を伴うテクトニクスの転換があった可能性が指摘される.こうしたテクトニクス史からみて,現在観測される同地域へのひずみ集中は,約15~20万年前以降から続く応力場とそれに対応した地殻変動の一表現であると考えられる.
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