本年度は、ゼブラフィッシュを成体脳における神経細胞の産生・移動研究のモデルとして確立するために、成魚脳室下帯を構成する細胞構造の解析を行った。同時に、成魚の脳室下帯で新たに産生されたニューロンの移動をライブイメージングするためのトランスジェニックフィッシュの作成を行った。 (1)ゼブラフッシュ成魚の脳室帯を構成する細胞構造の解明 BrdU標識により成魚の脳室壁付近で細胞増殖部位が存在することを確認した。さらに、成魚の脳室壁付近でBrdUラベルされた新生細胞が嗅球へ移動していることを示唆する結果を得た。マウスを用いた解析で確立された細胞タイプ特異的マーカーの発現解析から、成魚脳室壁は繊毛を有する放射状グリア細胞で構成され、その近傍に移動中のニューロンのマーカでラベルざれる細胞塊が存在することを明らかにした。電子顕微鏡により成魚脳室下帯の細胞構築の微細形態を観察したところ、マーカー発現解析の結果と一致した。ゼブラフィッシュ成魚を用いた本研究の結果は、他の脊椎動物における脳室下帯の細胞構成および機能の進化的な保存性を示すものである。 (2)成魚脳内の神経細胞の動態解析のためのトランスジェニックフィッシュの作成 α1チューブリンのプロモーター下で蛍光タンパク質(GFP)を発現するDNAを野生型胚に微量注入することにより、新生ニューロンでGFPを発現するトランスジェニックフィッシュを作成した。本トランスジェニックフィッシュ成魚脳において、脳室下帯に存在する新生ニューロンでGFPを発現していることを確認した。新たにneurogenin1のプロモーター下でGFPを発現するトランスジェニックフィッシュ成魚脳において、GFPが新生ニューロンで特異的に発現していることを見いだした。現在、これらのトランスジェニックフィッシュ成魚から脳を取り出し、二光子顕微鏡下で新生ニューロンの移動を観察中である。
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