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食事時の社会的環境が子どもの食行動に与える影響について調べるために、主に2つの研究を実施した。まず、実験者が設定した食事場面での母子のやりとりを、月に1度継続して縦断的に観察した。具体的には、食物や非食物を母親に手渡し、それらを食べる(又は操作する)母親への子どもの行動と、母子のやりとりを観察した。その結果、食物提示時に特異的な行動が、5〜6ヶ月齢の時点で既に見られることがわかった。観察された行動が生起するメカニズムを探るため、5ヶ月齢児を対象にさらに実験をおこなったところ、行動の生起には食物を食べずに操作して見せるだけでは不十分であり、食べる他者の存在が重要なことが示唆された。 また、食物にたいする他者の情動反応を、子どもがいつ理解するようになるのかを調べるため、6ヶ月齢児と10ヶ月齢児を対象に実験をおこなった。具体的には、他者が味溶液の摂取に付随して快または不快反応を示したさいの乳児の反応を調べた。そのさい乳児には、他者が摂取するのと同じ味溶液を事前に経験してもらい、他者の示す反応が自身と同じ場合と異なる場合で、乳児の反応が異なるかを検討した。その結果、6ヶ月齢児と10ヶ月齢児ともに、他者の示す反応により乳児の反応には違いが見られた。しかしその内容は月齢により異なり、他者の示す情動反応の認知的処理には両月齢間で違いのあることが示唆された。 以上、得られた結果はいずれも、離乳期の早い時点から、食事時の社会的環境から子どもが情報を得、影響を受けている可能性を示す。離乳期における「食育」のあり方や食の進め方について提言を試みる上で必須となる貴重な資料が得られた。
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