研究概要 |
本研究は,高齢者の転倒の危険因子として足関節の動作不全に着目し,足関節底屈動作の原動力となっている底屈筋群の形状と力学特性を検証した.足底屈動作時において,腓腹筋を覆っている腱膜のストレイン(歪み)は高齢者で顕著に小さく,筋束の短縮量も若年者の4割程度しかなかった.また,筋束の短縮量に対する腱膜の変位量の比率(ギア比)も高齢者で小さく,1.0未満であった.高齢者は筋東長変化の絶対量が小さいにも関わらず,筋束の短縮量を効率良く腱膜の変位に増幅するシステムを有しておらず,腱膜のストレインが小さいので,結果として,足底屈動作の可動範囲,すなわち踵骨の鉛直方向への変位,が小さくなっていることが示された. これらの研究成果は,加齢の擬似モデルである下肢懸垂を実施した論文(Journal of Applied Physiology 109;870-7,2010)の他,招待講演(第22回バイオエンジニアリング講演会2010,第64回日本体力医学会2009)として発表した.
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