東京湾において東京海洋大学練習船・青鷹丸による定期観測に併せて、2008年5月、6月、7月、8月、10月、11月、12月および2009年2月に大学係船場(東京都港区)と神奈川県三崎港の間で縦断観測を行った。また2008年5月には東京湾の横断方向等の広域観測を行った。航走中に海水のCO_2分圧(pCO_2)の連続計測を行い、大気中のCO_2分圧との差分値から、未飽和・過飽和の判別と、CO_2放出(吸収)フラックスの算出を行った。またpCO_2の連続計測と同時に、水温、塩分、クロロフィル蛍光についても連続計測を行った。さらに、一定時間おきに表層海水を採取し、全炭酸、栄養塩類、全有機炭素、全窒素、全リン分析を行った。この結果、湾央〜湾口にかけての海域は周年にわたってCO_2が未飽和で、大気からの吸収が卓越していたことが示された。一方、湾奥では赤潮発生時を除いて過飽和になる(従ってCO_2が放出されている)場合が多く、まれにこの過飽和域が湾央に大きく張り出すケースもあった。表層モニタリング装置を有しない本学練習艇「ひよどり」で湾奥部の過飽和域のpCO_2分布を詳細に解析するため、現有のpCO_2連続計測装置に、多項目センサー(YSI 6920V2-1)を組み込んで水温、塩分、クロロフィル蛍光を同時計測できるシステムを構築し、良好な試験観測結果を得た。このシステムを用いることにより、21年度から最湾奥部の本格的な詳細観測を実施することが可能となった。
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