東京海洋大学練習船・青鷹丸の定期観測を利用した観測を継続し、今年度は2009年4月から2010年3月までの各月1回、大学係船場(東京都港区)と神奈川県三崎港の間で縦断観測を行った。また、2009年5月には東京湾の西部を縦断する広域観測を行った。さらに、湾奥部の過飽和域のpCO_2分布を詳細に解析する目的で、東京海洋大学練習艇「ひよどり」を用いて、2009年5月、8月、11月、2010年2月の4回にわたり、東京港内(隅田川河口)、荒川河口、羽田・森が崎周辺、横浜港の観測を実施した。これらの観測では、昨年度導入・構築した多項目センサー(YSI 6920V2-1)を組み込んだpCO_2連続計測システムによって、海水のCO_2分圧(pCO_2)、水温、塩分、クロロフィル蛍光を航走中に同時連続計測した。また、一定時間おきに表層海水を採取し、全炭酸、栄養塩類、全有機炭素、全窒素、全リン分析を行った。海水のCO_2分圧(pCO_2)と大気中のCO_2分圧との差分値から、未飽和・過飽和の判別と、CO_2放出(吸収)フラックスの算出を行った。以上の観測結果から、今年度においても湾央~湾口にかけての海域は年間を通してCO_2が未飽和で、大気からの吸収が卓越していたことが確認された。湾最奥部の過飽和域においては、pCO_2は大きな変動を示したが、春季から夏季に過飽和が著しく進むことと、河川水・下水処理水が過飽和域形成に強く影響することが示唆された。
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