研究課題
河川から海洋に流入する陸源物質は沿岸海洋の生態系をコントロールする重要な要因の1つである。本研究では、生物生産の高いベーリング海をモデルフィールドとし、アラスカを流れる大河川ユーコン川などからの陸源物質の流入の時系列変化とその変動要因を探るため、海洋堆積物中の微量金属元素同位体の利用を試みる。特に、沿岸海洋に流入する陸源物質の起源・流入量の指標としてSr、Nd同位体の利用を、また大陸氷河や永久凍土の融解による地表の風化・浸食の変化を念頭に置き、陸域の環境変化の指標としてHf同位体の利用を試みる。平成20年度は、(a)堆積物中の鉄マンガン酸化物および炭酸塩(溶存態起源)と、(b)堆積物中の珪酸塩砕屑物の、それぞれのSr、Nd、Hf同位体を分析し、(a)、(b)のデータの対比から、ベーリング海における陸源物質のトレーサとしての有用性を確認した。また、マルチプルコア試料21地点の最表層部(みらい航海MR06-04 Leg.2で採取)を使用して現世ベーリング海堆積物中の珪酸塩砕屑物のSr、Ndのマッピング(地域分布解析)を行い、これらの砕屑物は基本的にユーコン川起源の物質とアリューシャン弧の火山起源物質の2つの混合物であることを明らかにした。以上の結果は、ベーリング海堆積物の微量金属元素同位体が、アラスカを流域とするユーコン川からの陸源物質流入量の時系列変化の解析に非常に有用であることを示している。平成21年度以降は、海水起源の鉄マンガン酸化物の同位体マッピングと、過去100年間の同位体変動解析から、近年の温暖化にともなう北極圏の陸域の大陸氷河や永久凍土の融解による表土流出との関連について検討する予定である。
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Tectonophysics 451
ページ: 206-224