研究概要 |
初年度の観測研究によって「鍾乳石の茶色と白の縞模様は,鍾乳石本体を構成する方解石の成長の季節変化に対して,その成長が遅くなる夏場に洞内河川から茶色物質が付加されることで与えられる」という縞々の形成過程に関する新たなモデルを提案した. 2年目は,このモデルの拠り所となったデータを引き続き継続して入手する毎月の観測を実施した.開発した滴下水のCa濃度と滴下レートを用いて間接的に鍾乳石の成長速度を割り出す方法を用い,鍾乳石本体を構成する方解石の成長の季節変化について再現的なデータを入手することができ,一方,夏場の洞内河川水位上昇期に鍾乳石(表面の)茶色の度合いが強くなるという現象も再現することを認めるとともに,新たに始めた洞内河川水位観測によって,鍾乳石が一時的に洞内河川に水没するためであることを確認した. また,成長中の鍾乳石の近傍で室内分析用に採取していた鍾乳石について内部断面の微小領域元素分析を行い,縞模様の茶色い部位と鉄や珪素などの濃集部分が一致するというデータの入手に成功し,鍾乳石の縞模様の茶色いスジは洞内河川の作用によって形成されているという仮説を裏付ける有力な証拠とすることができた.
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