研究概要 |
本研究では、地球温暖化係数の特に大きい温室効果ガスであるトリフルオロメタン,パーフルオロメタン,六フッ化硫黄の内殻イオン化後のクーロン爆発による分解過程の分岐比を明らかにするとともに、分子のどの結合とどの結合がどのような順番で切断されていくのか(逐次的分解過程)を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するためには「運動量イメージング法」と呼ばれる手法が必要であり、本年度はその根幹となる実験装置のうち最も重要な部分である飛行時間型質量分析器の設計・製作と立ち上げ、2次元検出器の組込み・調整を行った。今回新たに製作した飛行時間型質量分析器のイオン検出部にローエンデック社製の2次元検出器ヘックス80(マイクロチャンネルプレートとディレイライン型アノード)を設置した。このヘキサゴナル型のアノードはイオン検出時のデッドタイムを極力小さくするために工夫されたもので、今回の測定試料(トリフルオロメタン,パーフルオロメタン,六フッ化硫黄)のように同じ質量数のフッ素イオンが同時に複数生成する場合には必要不可欠である。2次元検出器上でのイオンの検出位置と飛行時間からイオンの質量(正確には比電荷の逆数)と解離時の初期運動量ベクトルが求められる。こうして得られた解離イオンの質量と運動量に関する情報を、1つのイオン化イベントで同時に生成したもの(相関するもの)同士を選び出して、ベクトル相関を調べるためのプログラムの開発を行った。 また、この分野における最新の研究成果の情報を得るために、日本物理学会などの学会や研究会に参加し、関連する研究者たちと本研究の進め方に関する議論も行った。
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