研究概要 |
本研究では、地球温暖化係数の特に大きい温室効果ガスであるトリフルオロメタン(CHF3),パーフルオロメタン(CF4),六フッ化硫黄(SF6)の内殻イオン化後のクーロン爆発による分解過程の分岐比を明らかにするとともに、分子のどの結合とどの結合がどのような順番で切断されていくのか(逐次的解離過程)を明らかにすることを目的としている。昨年度はその根幹となる実験装置である飛行時間型質量分析器の設計・製作と立ち上げ、2次元検出器の組込み・調整および解析用プログラムの作成を行った。 今年度は、製作した装置を広島大学放射光科学研究センターの放射光施設(HiSOR)の軟X線光化学ビームラインBL6の末端の真空槽に据え付けた。まずCF4分子、次にCHF3分子について実験を行った。HiSORからのシンクロトロン放射光を高分解能軟X線分光器で単色化し、実験試料分子に照射した。内殻イオン化後のオージェ崩壊により生成した分子の多価イオンからはクーロン爆発が起こり、複数のイオンが同時に生成する。これらのイオンの2次元検出器上での検出位置と飛行時間からイオンの質量と解離時の初期運動量ベクトルを求めた。CF4においてもCHF3においても、3価イオンから生成するさまざまなイオンの組が観測された。実験結果を詳細に解析することにより、従来から予測されていた同時三体解離過程は比較的少なく、逐次的な三体解離過程が主要な反応であることを新たに見出した。 これらの結果は、日本放射線化学会、日本放射光学会、The 14th Hiroshima International Symposium on Synchrotron Radiationで発表した。また、この分野における最新の研究成果の情報を得るために、日本化学会に参加し、関連する研究者たちと本研究の進め方に関する議論も行った。
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