ヘリウムマイクロプラズマを分解・励起源とした低消費ガス・低電力型原子発光検出チップを開発する。開発した検出チップをチップ分離システムに搭載し、実用性の高い環境測定システムを構築する。具体的には、(1)感度・選択性・測定安定性において既に開発した原子発光検出デバイスと同等以上の性能を有する検出チップを開発する。(2)チップGCカラムなどの小型分離システムに搭載し、その性能が発揮できる小型測定デバイスを開発する。(3)操作が簡便で、かつ効率的な前処理が可能な固相マイクロ抽出が適用できる試料導入部を搭載した測定システムを構築する。 当該年度は、まず、環境測定対象物質として重要な有機塩素および臭素化合物に関して、同軸型マイクロプラズマトーチを備えた原子発光検出デバイスの検出特性評価および検出チップの試作を行った。モデル試料としてトリハロメタンを用い、特性評価には先行研究で開発したポータブルガスクロマトグラフを用いた。低消費プラズマガス検出を考慮し、プラズマガス流量を5.6mL/minとして印加電圧および印加周波数を最適化した。最適化した測定条件においては、化合物(分子構造)に依存せず、塩素および臭素量とそれぞれの原子発光強度との間に良好な直線関係が認められ、構成元素比の推定に使用できることを示唆した。検出下限に関しては塩素、臭素とも50pg程度であった。プラズマガス流量を制限したことにより、プラズマの不安定性に起因する繰り返し再現性の低下が認められた。
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