ハロゲンを含む揮発性有機化合物(ハロカーボン)は温室効果やオゾン分解能をもつ気体成分であり、生物が多く生息する対流圏のオゾン濃度の決定にも関与していると考えられている。しかし、生物による生成に関する知見は少ない。海洋や汽水湖では、植物プランクトンが十分に光合成をすることができない有光層以深にも高濃度のハロカーボンが確認されており、それらハロカーボンの生成にバクテリアが関与している可能性がある。しかし、バクテリアによるハロカーボン生成に関する知見は乏しく、バクテリアのハロカーボン生成機構や生成するハロカーボン量の見積りは不確かである。 平成22年度は微生物によるハロカーボンの生成量および生成機構に関する知見を得ることを目的として実験を行った。粘性の高い微生物の培養液中のハロカーボンを高感度に分析するために、ダイナミックヘッドスペース法(DHS法)による分析条件を検討した。培養液で希釈した標準溶液をDHS-ガスクロマトグラフ質量分析装置で測定した結果、pmol L^<-1>~nmol L^<-1>の間で直線性がみられ、再現性も良好であった。次に高濃度のハロカーボンが観測されている観測点で採取した試料を寒天培地に塗抹して、コロニーをピックアップしてバクテリアを単離した。先に最適化した分析法を用いて単離した株の培養液を測定し、ハロカーボンの生成を調べた。その結果、複数の株においてハロカーボンの生成がみられ、バクテリアによるクロロメタン、プロモメタンの生成を初めて明らかにした。
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