研究課題
本申請課題は、従来その大部分が未同定とされてきた天然水中の溶存有機物を分子サイズ、疎水性-親水性、酸-塩基などの性質により分画し、それぞれの分画を超高分解能イオンサイクロトロン共鳴型質量分析器(FT-ICRMS)により網羅的に同定することにより、含まれる有機物の分子種や起源を明らかにすることを大きな目的としている。2009年度は、溶存有機物の分離・精製法の検討を行うとともに、XAD固相抽出(IHSS法)により分離された琵琶湖溶存有機物のNMRおよびFT-ICR MS分析を行い、同じ試料をC18固相抽出法により抽出した試料との違いについても検討した。その結果、電気透析法は溶存有機物の透析膜からのコンタミネーションが深刻であり、溶存有機物の前処理として使用することは現状難しいことが分かった。また、^<13>C NMRスペクトルでは、糖のアノマー位の炭素が観測されるσ値70~110ppmで、C_<18>吸着DOMにおいてXAD吸着フルボ酸より明らかに大きなピークが観測され、C_<18>ディスクがXAD樹脂よりも多糖類の吸着捕集に優れているということが示唆された。また、FT-ICR MS測定結果から計算された、予想分子式の元素比を基に作成されたvan Krevelen Diagramによると、両試料はともにリグニン様物質を中心に構成されていることが示唆された。また、C_<18>吸着DOM試料には多糖類,縮合型炭化水素類が、XAD吸着フルボ酸試料にはタンパク様物質が加わっていることが示唆された。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)
環境省環境技術開発等推進費「琵琶湖における植物プランクトンの長期変動と難分解性有機物を考慮した水質汚濁メカニズムの解明について」報告書
ページ: 40-49
Verhandlungen Internat.Verein.Limnol. 30
ページ: 1202-1206