本研究の目的は、生態系サービスの総合評価を行うための環境経済評価手法を開発することである。環境経済評価手法の中でも、環境汚染回避支出行動に関する市場データ、及び自然環境資源の開発行為に伴う機会費用等の市場データに基づき、多様な生態系サービスに適用可能である汎用性の高い環境支出行動評価法を開発することが主課題である。また、個別の生態系サービスに関する市場データ及び既存評価研究を国内外で収集し、データ統合手法であるメタ分析を実施する。上記の評価手法を開発・適用することにより、生態系サービスの総合評価において、信頼性及び妥当性の高い環境経済評価を実現することが可能となる。 本年度は、本研究着手前の準備段階において収集したオリジナル・データに基づき、表明選好データと顕示選好データの結合モデルを構築して実証分析を行った。中国蘇州市及び杭州市における湖沼と河川を水源とする飲料水の水質悪化とその回避行動に関する住民データを収集し、日本において構築したモデルと比較した。その結果、水質改善への限界支払意志額は得られたが、配水施設の改善への評価は低いことが明らかとなった。また、首都圏の都市公園における利用者データを用いて混合ロジットモデル等を用いて分析を行い、表明選好データと顕示選好データを結合したモデルにより実証分析を行い、顕示選好データを結合させることにより、適合度が改善されることを明らかにした。本年度は、その成果及び途中経過を、国際生態経済学会、アメリカ農業経済学会及び環境経済・政策学会、日本都市計画学会等において報告した。
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