本研究は、生態系サービスの総合評価を行うための環境経済評価手法を開発することを目的とする。環境経済評価手法の中でも、環境悪化を回避するための個人の支出行動に基づき、多様な生態系サービスに適用可能である環境支出行動評価法を開発することが主な課題である。そして、環境支出行動評価法による評価結果の信頼性を向上させるため、表明選好法と環境悪化回避支出の結合と比較を行うことも研究課題とする。さらに、個別の生態系サービスに関する既存評価研究を国内外で収集し、データ統合手法であるメタ分析を実施する。これらにより、生態系サービスに関する信頼性及び妥当性の高い環境経済評価を実現することが可能となる。 本年度は、回避支出法と選択実験のモデル分析結果を行い、選択実験モデルに回避支出を組み込むことにより、評価モデルの信頼性が向上することが明らかになった。そのため、森林生態系保護地域における生態系サービスについて、種の多様性と生態系の多様性の観点から選択実験による経済評価を実施した。種の多様性の評価結果については、生態系調査において得られるメッシュデータと結合するためのモデルを構築した。また、生態系の多様性の評価結果については、全国各地の生態系保護地域に関する面積や種数等の情報を組み入れること、そして海外の事例と比較し、データ統合を行うことを目的としてモデル構築を行った。 本年度は、その成果及び途中経過を、欧州環境資源経済学会及び環境経済・政策学会、農村計画学会等において報告し、最終年度におけるとりまとめに向けて有益な議論を行った。
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