研究概要 |
駿河湾御前崎沿岸をモデルとして海藻相・藻場を指標とする温暖化の影響評価を行う事を目的に20年度より研究を行っている。20年度は御前崎沿岸で海藻相の調査と藻場のバイオマス調査を行うとともに,水温ロガーによる1時間毎の現場水温の測定と,御前崎の水温・気温に関する既往資料の解析を実施した。その結果,御前崎沿岸における海藻の種数とバイオマスは春季から初夏にかけて高い事が明らかになった。また,夏季に出現した海藻の中に,過去の知見では未確認の,九州から沖縄に生育する暖海性と考えられる種がいくつか確認された。連続水温測定は水温ロガーの設置場所と設置方法を改良して長期モニタリングに成功した。さらに,行方不明になっていた平成18年に設置した水温ロガーの回収にも成功し,3年分のデータを解析できた。既往資料については,潮間帯の海藻相に影響を与える気温・水温について,気象庁で継続的なデータが取られていることが判明し,そのデータを解析した。その結果,1990年代以降の気温・水温はそれ以前と比べ,特に冬季に上昇していることが明らかになった。 これまで,日本のほぼ中央に位置する御前崎沿岸の海藻相・藻場については,過去にいくつかの貴重な報告がありながら,現在の海藻相・藻場との比較という視点で解析された例は少なく,現場の水温などに関してはほとんどモニタリングされて来なかった。20年度に行われた藻場・海藻相調査およびバイオマス調査により,御前崎沿岸の藻場・海藻相の現状が明らかになり,またそのバイオマス推定に必要な基礎データを得ることができた。さらに同時期の水温モニタリングが成功したことにより,藻場・海藻相の現状に直接影響を与えている水温データを得ることができた。よって20年度は本研究課題の骨格となるデータを得ることができ,それらは21年度以降の研究の遂行により精度が高められるものと考えられる。
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