研究概要 |
近年,温暖化による生物の分布域の撹乱が社会問題となっており,現時点における生物相の把握や過去の生物相との比較は重要な課題である。静岡県御前崎沿岸は過去からの海藻相に関する知見が集積しており,過去と現在の海藻相が比較可能な数少ない場所である。また,2000年には相良・御前崎沿岸のサガラメ海中林約8000ヘクタールが消滅した事が伝えられており,その後,御前崎地先においてどのような海藻種がどれくらい生育しているかについては大変興味深い。そこで,本科研費の助成を受け,御前崎沿岸における海藻相・藻場を指標とした温暖化の影響評価を行う事を目的に平成20年度より研究を行っている。 平成21年度は御前崎の水温・気温に関する既往資料と本研究により水温ロガーで得られたデータの解析を行った。水温,気温の年平均値はともに長期的に上昇傾向を示し,1963~2009年の47年間では水温は0.75℃,気温は1.26℃上昇していることが分かった。また,長期的な月別の水温は5~8月を除き上昇傾向が,月別の気温は7~8月を除き上昇傾向が認められた。この解析結果については21年度の陸水学会甲信越支部会や藻類学会で発表した。 21年度も御前崎沿岸で海藻相調査と藻場のバイオマス調査を継続して行った。これまでに得られた海藻種のデータの中から,21年度は緑藻類の種組成と季節消長についての結果をとりまとめた。2005~2007年までに緑藻類21種(アオサ目は7種,ミル目は5種,シオグサ目は4種,ミドリゲ目は2種,ハネモ目は2種,イワヅタ目は1種)を確認できた。また,御前崎で新産種としてナヨシオグサ,マガリシオグサ,ヒメアミハ,ナンバンハイミル,モツレミルの5種を確認する事ができた。この結果については山梨大学の研究紀要に報告した。
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