研究概要 |
本課題では,世界各地で安全な水源と適切な衛生設備の不足により引き起こされる問題の解決のため,水系の微生物汚染に対して輸送機構と感染機構を統合した予測モデルを確立し,アジアモンスーン域の洪水氾濫地域において汚染影響の実態を検証することを目的とした.平成22年度は,1. 環境因子を考慮した陸水域の微生物輸送モデルの作成,2. 社会因子と衛生行動を考慮した下痢発病の疫学モデルの作成,3. 洪水氾濫が水系感染リスクに与える影響の統合モデルによる検証のうち,1と3に関して昨年までに開発した微生物の河川輸送モデルをさらに発展させるため,河川水に含まれる細菌以外の原虫、ウィルス等の微生物の調査と,アジア地域の地下水に含まれる微生物の調査を実施した.その結果,前者については,細菌と同様に原虫やウィルスも洪水期間に極めて高濃度で検出されることがわかり,ヒトと家畜由来の微生物を区別できるような遺伝子工学的検出法を用いることで,今後はより正確な暴露解析につながる可能性を示した.また,後者については,人口集中が著しいネパール・カトマンズ盆地で雨季に現地調査を行い,都市洪水が地下水酒養に影響していること,その影響は開放井戸から採取された地下水で顕著であること,極度に汚染された河川の影響は浅層の地下水水質に対してさえも明確でないこと示した.以上は,将来,河川と地下水を連動させた、より実用的な汚染解析を行う上での貴重な成果となった.
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