研究概要 |
本研究の最終的な目標は,持続可能な社会の構築に向けて,如何なる環境情報を社会の中に如何に埋め込んでいくべきかを明らかにすることである.平成22年度は,「関係の連鎖」を伝えることに着目した環境教育プログラムの開発と評価に重点をおいた. ライフサイクル思考に基づき,個々人の日常生活と地球温暖化の「関係の連鎖(=つながり)」自体を情報として伝える環境教育プログラムの開発を平成20,21年度に引き続き実施した.このプログラムの最大の特徴は,環境教育用LCAソフトウェア「かばんの中でも温暖化?!」の利用にある.このソフトウェアを用いることで,学習者は各自の所持品のライフサイクルを認識するとともに,自らの行動変化がもたらすライフサイクルCO_2排出量の増減を算出できる.平成21年度までに開発したVer.1をベースとして,平成22年度には、学習者の所持品のライフサイクルをよりわかりやすく提示するなどの改良を行ったVer.2を開発した.その上で,改良したVer.2の有効性を検証する予定だったが、3月11日の大震災の影響により、神奈川県下の高校生を対象とした試行が予定通り実施できなかったため,検証のために十分なデータが得られなかった. また3年間にわたる環境教育プログラムの試行から得られたデータの分析結果を総括して考察したところ,自らの消費行動とそれを支える生産/廃棄活動や自然環境との結びつき,すなわち「関係の連鎖」自体が環境情報として効果的である可能性が認められた.加えて,一般的な情報としての「関係の連鎖」ではなく,自らに関する「関係の連鎖」を実感することが有効であることも示唆された.最近は,カーボンフットプリントなど環境負荷の見える化が盛んに行われているが,それとあわせて「関係の連鎖」を見える化することが重要であると考えられる.
|