生物多様性条約(CBD)の重要課題である遺伝資源アクセスと利益配分(ABS)について、CBD-COP10における名古屋議定書採択までの経緯の整理、国内及びマレーシア関係企業等に対するアンケートを実施した。その後、3カ年の研究成果のとりまとめを実施した。 1. 国際議論の動向調査 昨年度までに実施してきたABS国際交渉の分析に引き続き、本年度は関連国際会議への出席(CBD-WGABS-9bis、COP10等)による情報収集・整理を実施した。2010年10月に愛知県名古屋市で開催されたCBD-COP10(第10回締約国会議)において、名古屋議定書が採択された。名古屋議定書は、COP10閉会直前まで合意が危ぶまれるほど難航した交渉である。本年度は、名古屋議定書採択までの議論を整理し、国際交渉の論点を明らかにした。 2. 利益配分メカニズムに関する研究 昨年度までのプレテストやヒアリングの成果を踏まえ、本年度は国内の企業等関係者やマレーシアの企業等に対してアンケート調査を実施した。名古屋議定書採択までが非常に難航したため、アンケートをCOP10終了後に実施した。国内アンケート結果では、遺伝資源を入手している企業のみを抽出した際、科学研究目的の場合にはアクセス料、研究成果の共有などの利益配分が、また商業目的の場合には、アクセス料、ロイヤルティー支払、研究成果の共有などが利益配分として望ましいという意見が多い結果となった。マレーシア企業に対するアンケートでは、バイオ産業振興の公社であるMalaysian Biotechnology Corporation (Biotech Corp)が認定する優良バイオ企業等を対象としたアンケートを実施した。その結果、金銭的利益配分への支持が高い結果が得られた。
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