研究概要 |
われわれの研究グループの2010年度の研究業績は次の3分野である.(1)マクロ計量モデルの開発とそれを用いた日本経済と環境政策効果に関する分析,(2)応用一般均衡(CGE)モデルを用いた貿易自由化と環境負荷に関する分析,(3)CGEモデルを用いた炭素税および排出量取引制度の効果分析 (1) については,研究協力者の協力を得て開発した日本経済3E計量モデルを用いて,2020年までの日本経済(生産,物価,雇用,財政),エネルギー需要(エネルギー別),二酸化炭素排出量の予測を行った.以上のベースラインに加え,炭素課税やエネルギー効率の改善のシミュレーションを実施して,政策効果を確認した. (2) については,まず,GTAP-Eモデルを用いて,東アジアの貿易自由化がエネルギー集約財産業の比重やエネルギー価格低下による排出原単位の変化を通じてもたらす環境負荷を分析した.さらに,独自に開発した東アジアリンクCGEモデルを用いて,日中の貿易自由化が東アジアの経済および環境分野の産業に与える影響を実証的に明らかにした.特にGTAPモデルでは分析できない国際間の産業間への波及効果を明らかにした. (3) については,GTAP-Eモデルを利用して日本・アメリカ・EUにおける産業別炭素税・グループ別炭素税および国内排出量取引の経済効果を分析・比較した.産業を2つのグループに分け,炭素税率に差異を設けても国内排出量取引とマクロ経済への影響はほぼ同じであることを示した.また,GTAP-Eモデルを利用して国際排出量取引の効果分析も行い,エネルギーと他の生産要素との代替の有無がカーボン・リーケージの大きさに重要であることを確認した.
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