研究概要 |
森林の持続可能性と林産物貿易の関係の産業組織論的・政治経済学的分析を行っている。世界の主要な林産物輸出国の林産加工業は非常に寡占化しており、欧米では多国籍化したこれらの企業またはその業界団体の各国の政府や国際的枠組みの交渉に及ぼす政治力の大きさを指摘する研究もある。そこで林産物輸出国の産業組織論的特質や国際的な価格支配力の理論的・実証的分析を試みている。特に、その中での林産物に関する多国籍企業のレントを計測する実証モデルの構築し、将来的にはレントの政治過程への影響を考えていくベースとしたい。 寡占価格の形成やレントの計測については、供給寡占をベースとしたもの、需要寡占をベースとしたもの、また両方を組み込んだものがあり、さらにモデル構築を静学的に行っているものもあれば、動学的にこれを求めているものもある。長期的なレントの影響を考える時には、動学的な超過利潤を考えるほうが有効であると考え、カナダの林産業について動学的な寡占価格形成の有無を検証しているBernstein,J.I.(1992)のモデルをベースにレントの計測を行うことにした。 昨年度カナダの林産業の財務データ、費用データと生産・出荷データについて探索を行い、Statistics Canadaという政府のサイトから、木材加工業と紙パルプ産業について、財務データ、費用データ、生産・出荷データを有料でダウンロードした。 今年度は、これらのデータと上記論文の枠組みを基礎に、実際にレントの推定モデルの構築を試みた。Bernstein,J.I.(1992)のモデルは非線形の同時方程式体系で3SLSによって分析されているが、非線形の3SLSの統計パッケージの発見が困難であるため、統計パッケージソフトSTATAで、ひとまず非線形の同時方程式体系をseemingly unrelated regressionを用いて計測している過程である。
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