研究概要 |
現時点における環境政策の論点は,さまざまに提案されてきた諸環境政策の相互関係をどのように整理し,また高次レベルで議論されてきた取り組みをいかに市民レベルに行き渡らせていくかということにある。このような市民向けの環境対策には,情報・コミュニケーション手法に基づく政策が有効である。すなわち,グリーン・コンシューマーに環境情報を豊富に公開することにより環境配慮的な消費行動により敏感になってもらうことで,経済全体のグリーン化を目指すという考え方である。そして,この環境施策の代表例として,カーボン・フットプリント制度がある。そこで,この制度が,情報のユーザーとしての消費者にどのように受け入れられ,政策立案にどのように生かされていくべきであるかを考察した。具体的には,産業連関表から計算されたCO2排出点数を用いて,カーボンフットプリントの情報が広く普及した場合に,それが政策評価のためにどのように活用されるかを示した。 またOECD諸国の中の環境先進国といわれる国々においては,国家と市民との橋渡しをする機関として,地方自治体が大きな役割を持つことが指摘されている。そこで本研究では,環境モデル都市である横浜市をとりあげ,地方自治体の取り組みが市民レベルの環境行動といかに係わるかについても考察した。まず,横浜市における全国消費実態調査にもとづく詳しい分析により,近年の市民のライフスタイルの変化の実態及びその環境影響を明らかにし,次に横浜市民の消費行動を記述する需要関数の計測を行った。さらにその結果をCO2排出点数の情報と結びつけることで,政策に誘導されて市民のライフスタイルが変化した場合にどんな効果が現れるかをシミュレーション分析した。そこでの結果から,消費者のライフスタイルの変更を誘導するような環境政策は,各自治体市民の特性をよく踏まえた上で注意深く行われるべきとの結論を得た。
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