研究概要 |
最初に横浜市の全国消費実態調査・個票データを用いて需要関数を計測し,それをいくつかの環境消費政策のCO2排出削減効果を分析した。その結果,政策に対する消費者の反応行動をきめ細かく分析する必要のあることが明らかになった。 そこでまず,スーパーマーケットの販売データを用いて販売過程におけるCO2誘発量の算定を行うためのデータベースを作成した。結果,食料品購入によるCO2誘発排出量のうち販売プロセスが占める割合は4~37%程度であり,この部分のCO2誘発排出量の削減策を模索することは効果を持つことがわかった。 次に食のライフスタイルによる環境影響を考察するために,代表的食事のメニューによって誘発されるLC-CO2排出量の算定を行い,高齢化,女性の有業化によって生ずると予想される,食生活における消費者の選好の変化から,どの程度の環境影響が発生するかを考察した。結果,メニュー単位など消費者に使い勝手の良いCO2排出量の情報は新たな環境配慮行動を生み出す可能性があり,グリーンコンシューマーの啓発を促進すると考えられた。 次に外食産業サービスのLC-CO2算定を試みた。結果,外食メニュー1食あたりのCO2誘発排出量のうち,食材誘発分は比較的少ないことがわかった。サービスのCO2見える化により消費者にこのような事実を知らせ,サービス本体以外の部分でのCO2排出削減努力を促す工夫が重要であると考えられた。 最後に食材そのものの生産に伴うCO2誘発排出量削減策として,土壌の炭素貯留効果の活用を考え,同効果を分析できる産業連関表を開発した。結果,2005年の日本全体の家計の食料消費が誘発したCO2排出量のうち,炭素貯留によって5.74%を削減できることがわかった。また,炭素貯留分のCO2が排出権市場で売買された場合,米部門では1.7%程度までなら有機農法に伴う人件費の上昇をカバーできるかと試算された。
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