愛知県知多郡美浜町の農業用ため池を題材に、ため池の多面的機能ならびに経済価値の測定を行った。現地調査結果に基づき多面的機能の調査項目の設定を行い、経済価値の測定についてはネットアンケートを用いた。選択肢は、周辺の管理状況、水際環境、水質、生息する魚類、管理費用の5つの属性をもつため池の5択とした。また、回答者がため池までアクセスする距離およびため池の大きさについては選択肢間で無差別とした。年齢、性別、仕事の有無、結婚しているか否か、世帯所得、貯蓄高、18歳未満の家族の有無および65歳以上の家族の有無も、回答者の属性として調査した。調査は、皿池および山池の2種類それぞれについて行い、混合ロジットモデルにより属性別の限界価値を測定した。主な分析結果を列記する。(1)山池の周辺管理の方法として、回答者は金網フェンス張りと比べ散策道・ベンチが整備されることに約720円支払っても良いと考える。(2)水際環境が自然のままの場合と比較し、デッキが整備されることに約280円支払っても良いが、コンクリートによる護岸を行う場合は約360円受け取りたいと考える。(3)水質が1段階改善されることに対して約510円支払う意思がある。(4)生息している魚類は種が混在している場合と比較し、日本固有種のみが生息する場合に約780円支払っても良いと考えるが、外来種のみが生息するのであれば約320円受け取りたい。(5)皿池の場合は、コストをかけて居住地域の環境の一部として公園のように活用したり、水質を改善したりという回答者の意識は確認されない。(6)金網フェンスが張られて放置された自然に近い状態から、ため池の各属性のステータスが変更する事に対し、コストを支払っても良いとは考えない。
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