企業が行う環境コミュニケーション活動の役割として、内部の組織能力の向上や、市場での企業価値の向上が期待されている。本研究の目的は、このような企業の環境コミュニケーション活動の「期待される役割」について、企業調査から現状を検証し、それを踏まえてエージェントベースシミュレーションから有効な環境コミュニケーションデザインを提示することである。前年度は、環境コミュニケーションや環境問題に関するABM研究のサーベイ、および、企業や自治体などへのインタビューを行った。 今年度は、前年度の研究成果を踏まえて、文献収集追加、及び、1. ユニークな環境コミュニケーション活動を行う企業や組織、2. 中小企業、および、中小企業の環境経営を支援するための環境コミュニケーション活動を行う企業や組織へのインタビューを実施した。1の対象は、島津製作所、宝酒造、ファンケル、パナソニック、富士フイルム、日本精工、シャープ、日本興亜損保、日本電気、積水ハウス、パタゴニア、東京商工会議所である。2の対象は、KES環境機構、京都市中小企業支援センター、京都商工会議所、KSVU、エコエナジー、日本電気化学、新岩村電機、JR西日本ホテル開発、ミヤコテックである。 1のうち、家庭の省エネ活動にまで踏み込んだ環境コミュニケーション活動を行う企業を取り上げ、その仕組みと促進要因の組織特性、他の企業への適用可能性などを分析した。さらに、そのような環境コミュニケーション活動を普及させるための環境政策をデザインするために、エージェントベースモデリングの分析課題を抽出した。これらの内容を論文にまとめ公表した。また、2については、中小企業の環境経営を支援する組織や取引先企業の活動を整理し、地域社会の環境政策としての課題と、エージェントベースモデリングでの分析課題を抽出した。これらの内容についても論文にまとめ公表した。
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