企業が行う環境コミュニケーション活動の役割として、内部の組織能力の向上や、市場での企業価値の向上が期待されている。本研究の目的は、このような企業の環境コミュニケーション活動の「期待される役割」について、企業調査から現状を検証し、それを踏まえてエージェントベースモデリング(以下、ABM)の手法を用いて有効な環境コミュニケーションデザインを提示することである。20・21年度では、環境コミュニケーションや環境問題に関するABM研究のサーベイ、および、ユニークな環境コミュニケーション活動を行う企業や自治体などへのインタビュー、ABMでの分析課題を示した。 今年度は、前年度の調査研究を踏まえて、次の2つのABM研究を行った。いずれも論文を作成し学会で公表した。 1.中小企業の環境経営を推進するための、地域社会における環境コミュニケーションを活用した支援策に関して、ABMにより有効性を検討した。前年度の調査で明らかになったビジネスマッチングや環境知識提供といった支援策を抽象化してモデル化しシミュレーション分析した。その結果、前者のケースでは環境経営レベルを向上させる企業の増加、後者のケースでは平均レベルでの環境経営レベルの向上が見られた。 2.従業員参加型環境コミュニケーション活動の事例を踏まえて、組織の環境配慮行動を促進するための環境コミュニケーションについて、非常に単純なモデルを用いて、その効果と限界を検討した。参加率公表、チェンジエージェント、仲間作り、組織間の相互参照についてモデル化しシミュレーション分析した。いずれのケースも環境配慮行動の普及に一定の効果はあるが、普及率や逆方向への収束など、それぞれの限界もあることが示された。
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