研究概要 |
本研究の目的は、電磁界が生体に対して「無害」なのか「有害」なのか「有益」なのかを細胞、遺伝子発現レベルで明らかにすることである。今年度は、放射線被ばくを伴わない診断方法として診療分野で重用されているMRIの主要構成要素である「強定常磁場(診断に通常使用されているMRIの定常磁場の大きさは地球上の磁気(地磁気)の30,000~60,000倍であるが、本研究では最大200,000倍の強度まで検討)」を検討する電磁界として選択し、インスリン分泌細胞への影響を評価した。MRI測定中、受診者は強定常磁場にばく露されていること、MRIに使用されている磁場の強度は大きくなる傾向になることを考えると、強定常磁場が「無害」なのか「有害」なのか「有益」なのか研究することは非常に意義深いものと考える。 インスリン分泌細胞株RINm5Fをサイトカイン(インターロイキン1β+インターフェロンγ)で3日間処理することで細胞活性、DNA合成能を障害した。サイトカイン処理期間中、細胞に強定常磁場をばく露し、サイトカイン処理による細胞活性、DNA合成能障害に対する強磁界ばく露の影響を評価した。サイトカイン処理による細胞活性の低下は、強定常磁場ばく露により抑制される傾向が認められた。一方で、サイトカイン処理のない状態での強定常磁場ばく露によっても、わずかながら細胞活性の減少が認められた。サイトカインによるDNA合成能の障害は、強定常磁場ばく露によっても抑制される傾向が認められた。来年度は、サイトカイン障害に対する磁場ばく露影響のメカニズムを、サイトカイン障害に関わる遺伝子、酵素の発現状況から検証する。
|