活性酸素によるDNAの損傷はゲノムの不安定性の主な原因と考えられているが、塩基を喪失した部位、APサイトは最も影響のあるDNA損傷である。これまで、APサイトを認識してその5'側にニックを入れて塩基除去修復を開始するヒト酵素はAPE1と呼ばれる酵素のみであると考えられていた。我々は全く新しい構造を持ち、APサイトの5'側にAPE1と同じようなニックを入れ、さらに3'-5'への強いエキソヌクレアーゼ活性を持つ新規の酵素蛋白PALFを発見した。PALFの酵素活性を担うドメインはZinc fingerの用な配列がならび、幾つかの生物種を越えた遺伝子で保存されている。我々は京都大学の構造解析の研究室と共同研究をして、このドメインのNMRによる構造決定を行なった。さらにPALFと良く似た活性を持つヒト第3番目のAPエンドヌクレアーゼを発見し、これをAPENXと名付けた。さらに、APENXには殆どアミノ酸配列の違わない遺伝子がヒトには存在する事が分りこれをAPENXLと名付けた。このことは、これらの活性がヒト細胞に極めて重要である事を示している。いずれもポリADPリボースポリメラーゼ(PARP1)と結合し、単鎖切断の修復に関わっていると考えられる。そこで、これらの酵素のヒト細胞での役割を詳しく調べるために、それぞれの遺伝子やその組合せで発現を抑えた細胞を作製し、それらの種々のDNA損傷物質に対する感受性を解析している。
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