研究課題
細胞のDNA合成レベルが放射線照射後低下することは、生物種を問わない不変の現象である。例外的に、Ataxia telangiectasia細胞では、DNA合成レベルの低下はわずかしか見られないということがこれまでの知見であった。我々は、ゴーリン症候群の細胞において、X線照射後にDNA合成能の増大という、奇異な現象を見出し、その分子機構の解明を目指している。その過程で、X線照射後のDNA合成能の増大のメカニズムにSUMO遺伝子が関与することを見出していた。SUMOタンパク質の発現変動だけでは、DNA合成レベルに顕著な変化は見られないことから、X線照射後の細胞応答にSUMO遺伝子が関わると考えられた。HeLa細胞において、SUMO遺伝子のsiRNA処理により発現を抑制させ、X線照射を行うと、照射8時間後にDNA合成の誘導が見られた。このことは、X線照射後のDNA合成は、細胞特異的な現象でない普遍的な現象であることを示唆している。そこで、HeLa細胞を用い、分子機構の解明を進めることとした。まず、SUMOタンパクが減少したHeLa細胞において、X線照射後に発現が変動するタンパク質を2次元電気泳動法により探索した。複数のタンパク質の変動が見られたが、その中に、核酸代謝に関わることが知られているNM23-Hlタンパクが減少することを見出した。NM23-Hl遺伝子のsiRNA処理により、発現を抑制させると、X線照射後にDNA合成の増大見られた。さらに、SUMOタンパクを過剰発現させた細胞では、X線照射後にNM23-HlタンパクへのSUMOタンパクの結合が見られたことから、X線照射後に見られるDNA代謝調節機構に、NM23-Hlタンパクが関わることが示唆された。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)
Int.J.Oncol 34
ページ: 201-207
Arch.Biochem.Biophys.
Pancreas 36
ページ: e7-14
Photochem.Photobiol 34
ページ: 1455-1461
Chiba Medical Journal 84
ページ: 75-82