研究課題
細胞のDNA合成レベルが放射線照射後低下することは、生物種を問わない不変の現象である。ところが、FX線照射後にDNA合成レベルが上昇するという奇異な現象をゴーリン患者由来細胞で我々は見出した(Fujii et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.240,269-272,1997)。さらに、ゴーリン患者由来細胞において、X線照射後に発現レベルが低下する遺伝子として、ユビキチン様タンパク質SUMO3を同定し、HeLa細胞において、SUMO2/3のSiRNA処理により、SUMO2/3遺伝子の発現を低下させると、X線照射による合成の誘導現象が見られた。さらに、X線照射後にM23-H1タンパクが減少することを見出した。NM23-H1遺伝子のsiRNA処理により、発現を抑制させると、x線照射後にDNA合成の増大見られた。さらに、チミジンブロック法により同調した細胞を用い、詳細な解析を進めたところ、この増大は、照射後4時間後から見られたが、12時間後には見られなくなることから、一過性のものであることが示唆された。さらに、NM23-H1のsiRNA処理した細胞では、X線照射にPCNAの発現の増大が見られたことから、PCNAを介したDNA合成機構にSUMOが関わることが示唆されている。熱ショックや酸化ストレスにより、SUMO-2/3タンパクの発現増大が報告されているが、生理機能に関しては不明な点が多い。SUMO2/3遺伝子の発現を低下させた細胞では、放射線に対し感受性を示した。さらに興味深い事に、HeLa細胞において、SiRNA処理により発現を低下させると、カドミウムに対して感受性を示し、逆に、SUMO-2遺伝子を過剰発現させた細胞では、耐性化した。これらの結果から、細胞の様々なストレス応答にSUMO2/3遺伝子が関わることが示唆された。
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Mol.Med.Rep.
巻: 3 ページ: 673-678
Chiba Medical Journal
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