研究課題/領域番号 |
20510052
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中島 裕夫 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20237275)
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研究分担者 |
斎藤 直 大阪大学, RI総合センター, 教授 (50153812)
本行 忠志 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (90271569)
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キーワード | チェルノブイリ原発事故 / 低線量・低線量率放射線被曝 / 遺伝毒性 / 発がん性 / セシウム-137 / シミュレーション実験 / 生物濃縮 / 核種体内動態 |
研究概要 |
チェルノブイリ放射能汚染地域の低放射能レベルでのリスクアセスメントを早期に行うためには、ヒトにおける疫学に代わる短期代替法を検討しなければならない。そこで、その試みの一つとして実際に我々によるチェルノブイリ汚染地域調査で検出、測定されたと同じ放射性核種137Cs(セシウム137)、線量(10〜100Bq/g)による低線量放射線被曝環境を実験室内に作り、その環境下で遺伝的、生理的バックグランドのよくわかっている実験動物(遺伝的影響の検出が容易である近交系マウス)を世代交代させて、その影響を検討するシミュレーション実験を開始した。 本年度は、条件設定のために137CsCl水溶液の濃度を10Bq/mlと100Bq/mlの2群に設定し、近交系マウス(A/J)に自由摂水させて8ヶ月までに摂取された137Cs蓄積量変化とその分布、生物学的半減期を測定した。その結果、摂取された137Cs濃度は2〜3週間かけて徐々に上昇し、10Bq/ml群、100Bq/ml群での蓄積量は、それぞれ11.48、112.79Bq/gと給水濃度とほぼ同じ濃度で平衡状態となった。また、筋肉内137Cs蓄積量が臓器中最も多かった。137Csの生物学的半減期測定では、マウスに1KBq/g体重量の137CsCl水溶液を単回経口投与し、経時的に各臓器の137Cs含量を測定した。その結果、殆どの臓器では、経口投与後6時間までに137Csの放射活性がピーク(肺:1832、肝臓:2136、腎臓:4884、小腸:5851、脾臓:1556、心臓:3373、大腿骨:611、血液:175 Bq/g)に達し、その後、減衰してほぼ2日で半減した。しかし、筋肉では、遅れて48時間後にピーク(1148Bq/g)に達し、約13日で半減、脳でも48時間後にピーク(372Bq/g)に達し、約4日で半減することがわかった。 さらに、上記実験条件下で兄妹交配を続けて3世代まで世代交代させることに成功した。
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