53BP1は、既知のKu70/80/DNA-PKcs経路、ATM/Artemis経路とは異なる経路で、G1期細胞の非相同末端結合修復に関与している。昨年度までに我々は、E3ユビキチンリガーゼRAD18が、G1期にのみ53BP1依存的にDNA二重鎖切断部位に集積すること、その後Rad18が53BP1の1268番目のリジン残基をモノユビキチン化することにより、53BP1のDNA二重鎖切断修復活性を調節していることを示した。一方、DNA二重鎖切断の修復において、切断端が近接した部位に保持されること(synapsis機構)の重要性が認識され始めている。synapsis機構の破綻は、異なった染色体間の断端-断端結合をもたらすと考えられている。最近、53BP1がこのDNA二重鎖切断端のsynapsis機構に関与していることを示唆する報告がなされている。そこで、本年度は、染色体転座の発現頻度を指標に53BP1によるDNA二重鎖切断端のsynapsis機構が、Rad18による53BP1のモノユビキチン化により制御されているか否かを明らかにすることとした。53BP1-/-マウス胎児線維芽細胞、Rad18-/-マウス胎児線維芽細胞にSV40 large T抗原を導入し、不死化細胞を作製した。今後、これらの細胞に様々な変異型53BP1、変異型Rad18を発現させて、染色体転座の発現頻度を調べる予定である。
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