研究課題
甲状腺ホルモン輸送に関与する血清中のタンパク質トランスサイレチン(TTR)は、フェノール性化学物質を特異的に結合することが、明らかとなっている。しかし、このような化学物質がTTR以外のタンパク質とどの程度相互作用しているのか、まったく解析されていない。そこで、化学物質をクロラミンT法で[^<125>I]ラベルを行い、血清タンパク質と標識化学物質の相互作用を直接観察した。フェノール性の化学物質は、生物種によって血清タンパク質との結合の程度、結合するタンパク質の種類が異なっていた。魚類の血清では主にリポタンパク質に、両生類ではアルブミンに、鳥類ではアルブミンとTTRに、哺乳類ではアルブミンやTTRに結合していた。これらの結果は、同一化学物質に暴露されても生物種によって血清中での化学物質の存在形態に差が生じ、化学物質の組織分布、体内での代謝、内分泌系の撹乱活性に影響することを示唆している。TTRに対するフェノール性化学物質の結合親和性は、本来のリガンドである甲状腺ホルモンの親和性の10^2倍高かった。よって、TTRが主要な甲状腺ホルモン結合タンパク質であるげっ歯類や鳥類(特にオス)では、フェノール性化学物質の甲状腺ホルモン撹乱活性が顕著になると考えられる。
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