研究課題
ビスフェノールA(BPA)の存在下において、当初計画していたVasa遺伝子よりも鋭敏に発現が変化する生殖細胞関連遺伝子を見いだした。BPA存在下で分化させると、この遺伝子の発現は約10倍上昇した。一方でこの発現上昇はBPA濃度が50μMという比較的高い濃度でのみ認められた。さらにBPAはこの遺伝子の発現を制御する遺伝子群の発現にも影響することも明らかとなった。また分化の際にマイクロウェルプレートを使用して均一なEBを作製することにより、これら生殖細胞関連遺伝子の発現に関して再現性の高い実験系を構築することが可能となった。そこで当該遺伝子のプロモーター制御下で蛍光タンパク質(Venus)を発現するベクターを構築し、マウスES細胞へ導入した。得られたレポーター導入株は、未分化状態では蛍光を発せず、化学物質存在下においてのみ再現性良くVenusを発現した。このレポーター導入ES細胞株を化学物質の存在下で培養後、FACSによるVenusの発現解析を行った。その結果、化学物質の濃度依存的に蛍光強度が上昇し、化学物質の存在、およびその濃度を推定することが可能であることが示された。すなわち当初の目的であったES細胞を化学物質のセンサーとして使用し、蛍光強度により化学物質を評価するシステムが構築できた。さらに本評価系でノニルフェノール(NP)の検出を試したところ、蛍光強度を上昇させることが示された。この結果は、NPが生殖細胞分化に影響する可能性を示唆すると共に、本評価系でNPの存在を検出することが可能であることを示すものである。遺伝子発現は10μM NPで認められたこと等からRARの関与が示唆された。一方で、検出感度の改善が今後の課題である。以上、本研究により、レポーターを導入したES細胞を用いて、化学物質の存在、濃度を評価するシステム基盤を構築することができた。
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http://www.collabo.sk.ritsumei.ac.jp/laboratory/takada.htm