研究概要 |
[研究目的]申請者は作業仮説として、「生体内で生成したN-ニトロソ化アミノ酸が長波長紫外線に対する内在性光増感剤となり、活性中間体経由、もしくはエネルギー移動によりDNAに傷害を与える。また、内在性N-ニトロソ化アミノ酸がNOラジカルやアルキルカチオンラジカルの運搬体として働いて、照射部位で放出する。ひいては急性の皮膚傷害や光発癌にも関与する」と考えた。 [成果]この作業仮説に基づいて、a)UVA照射によりNPROからNOが遊離されるのを確認できた。また、pH依存性はなく、脂肪酸・血清といった体内成分中でも遊離が起こることが分かった。 b) ニトロソプロリンとグルタチオンの混合溶液にUVを照射すると、ニトロソグルタチオンが生成した。ニトロソプロリンとチロシンへUVを照射すると、少量のニトロチロシンが生成した。ニトロソプロリン,グルタチオンとチロシンへUVを照射すると、ニトロソグルタチオンの生成量は他の反応と同量であった一方、ニトロチロシンの生成量は大幅に減少した。3者の混合物へ、太陽光を照射すると、UV照射した場合と同様の反応が確認できた。 c) 発生するNOラジカルやアルキルカチオンラジカルとDNAとの反応解析を行なうため、DNAのモデルとしてデオキシグアノシンを選び、ニトロソプロリンとの光反応における生成物の解析を行なったところ、8-オキソグアノシン(8-oxodG)、デオキシオキザノシン(dO)、デオキシキサントシン(dX)生成が確認された。 d) ニトロソプロリンをデオキシアデノシン(dA)存在下、UVA照射すると、光産物として、デオキシイノシンならびにdAの2位に置換した付加体が生じることも分かった。 [考察]太陽光や近紫外光により、体内でニトロソプロリンは分解し、チオール類のニトロソ化と様々なたんぱくのチロシン残基のニトロ化を引き起こす可能性がある。また、DNAやその他核酸化合物に損傷を引き起こす可能性がある。
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