研究課題
はじめに紫外線吸収剤は、車や建材等のプラスチック製品に含まれ、世界的に使用量・使用品目の増加が認められる人工化学物質である。近年、沿岸域の様々な生物から紫外線吸収剤の検出が報告され、残留性と生態系への影響が懸念されているが、その環境情報には不明な点が多い。本研究では、野生生物と海洋底質試料の分析を行い、紫外線吸収剤による広域汚染の現状とその経年変化を調べた。試料と方法広域汚染の現状を把握するため、アジア沿岸の10の国と地域からイガイ(二枚貝)を採集した。また、東京湾の柱状底質試料と、環境試料バンクに冷凍保存中の日本近海産海生哺乳類をそれぞれ分析し、汚染の経年変化を調べた。分析法は有機溶媒で抽出した後、ゲルろ過カラム(GPC)及びシリカゲルカラムでクリーンアップしてGC-MSで定性定量を行った。結果と考察分析の結果、アジア沿岸で採取したほぼ全てのイガイから紫外線吸収剤が検出され、本物質による広域汚染の現状が明らかになった。とくに、韓国、香港、日本など東アジア産試料から高濃度のUV-326とUV-328の残留が認められ、この種の物質が大量に生産使用されている様子が窺えた。東京湾の柱状底質試料を分析したところ、1960年代後半から70年代前半の底質層から紫外線吸収剤が検出され、この種の汚染が約40年前から存在していたことがわかった。また、表層ほど底質中の紫外線吸収剤濃度が高く、本物質による汚染が現在も進行している様子が窺えた。類似の結果はイルカ試料の分析でも得られた。
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Environmental Science and Technology 43
ページ: 6920-6926
Interdisciplinary Studies on Environmental Chemistry-Environmental Research in Asia
ページ: 239-246