研究課題
はじめに車や建材等のプラスチック製品に含まれるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、様々な栄養段階の海洋生物に蓄積することがわかった。また、アジア沿岸における広域汚染の存在も明らかになった。一方で、これらの環境排出源や人体への蓄積性に関する知見は少ないため、編成22年度はこの2点を重点的に調査した。試料と方法日本・韓国・中国・米国・スペインからそれぞれ人体脂肪を採集し分析を行った(n=90)。環境排出源を調べるため、排水処理施設の流入水・流出水・汚泥と、国道沿いの8地点から道路粉じんをそれぞれ採取、分析した。分析法は有機溶媒で抽出した後、ゲルろ過カラム(GPC)及びシリカゲルカラムでクリーンアップしてGC-MSで定性定量を行った。結果と考察全ての人体脂肪から紫外線吸収剤が検出され、本物質の高い生物蓄積性と広域汚染の存在が明らかになった。とくに、韓国と日本人の脂肪から高濃度のUV-327とUV-328が検出され、昨年度に実施したイガイの分析結果と一致した。排水処理施設の水質と汚泥試料から紫外線吸収剤が検出され、身の回りの生活用品にこの種の物質が含まれ排水施設を経由して環境中へ排出される様子が窺えた。道路粉じんからも紫外線吸収剤が検出され、車両通行量との間に有意な相関が得られた。このことは、車のタイヤやボディー等に紫外線吸収剤が使用され、摩耗等により環境中へ直接排出されることを示している。
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Journal of Environmental Monitoring
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