動物発がんモデルより採取した腫瘍の凍結切片を用いて、細胞内シグナル伝達に関与する蛋白を多重蛍光染色法により検出し、個々の蛋白の局在と輝度の解析により共発現状況を定量化した。対象として、(1)ラット大腸発がんモデル(2)ラット乳腺発がんモデル を用いた。(1)では、腺がん組織にてβカテニンとサイクリンD1(Bcl-1)を同時検出し、組織切片上のシグナルを細胞単位で定量解析した。その結果、βカテニンの核への過剰蓄積によりBcl-1の発現が低下する可能性があることが明らかになり、負の調節系の存在が示唆された。(2)では、腺がん組織にて核に陽性を示すエストロジェン受容体α(ERα)と細胞膜に陽性を示すレプチンの受容体(ObR)について解析した。細胞毎のObRとERαの蛍光輝度には正の相関性がみられ、ERαとObR間の双方向のシグナル伝達経路が存在する可能性を示した。
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